猫井 登のパティスリー探訪~断面美ケーキを求めて~

第3回

こんにちは~。
朝晩ずいぶん涼しくなって、秋の到来が感じられる今日この頃ですが、甘党男子の皆様、お元気でしょうか?さてさて、秋の到来とともに、パティスリーのショーケースは、夏の間、鳴りをひそめていたナッツ系やチョコレート系のケーキが復活し、華やかさを取り戻します。
その中でも、甘党男子にとってやはり魅力的なのは「モンブラン」!
・・・というわけで、今回は、先日行われた甘党男子主催の「スイーツ祭り」の総括もかねてモンブラン全般についてお話しをしましょう。

モンブランというのは、もともとイタリアのピエモンテ州、フランスのサヴォワ地方といったアルプス山脈に近い地方の郷土菓子だったのです。イタリアではモンテ・ビアンコと呼ばれています。構造は至ってシンプルで、栗を甘く煮て、ペースト状につぶしたものに生クリームをドカッとのせただけの皿盛りのデザート。つまり、マロンクリーム+生クリーム。モンブランもモンテ・ビアンコも共に「白い山」という意味で、いつも目にしている万年雪でおおわれたアルプス山脈にちなんで名付けられたのでしょう。

これがパリに伝わって洗練されて、現在、日本のパティスリーでも見かけるような形になるわけです。
構造としては、メレンゲ(卵白に砂糖を混ぜてカリカリに焼いたもの)の上に生クリームをこんもりと絞って、その上を麺状に絞り出したマロンクリームでおおうというもの。パリで初めてモンブランを供したのは1903年創業のティーサロン「アンジェリーナ」だと言われています。一説には、アンジェリーナのパティシエの奥さんがイタリア出身で、モンテ・ビアンコをヒントに考案したと言われています。生クリームとマロンクリームはどちらも柔らかいので、食感に変化を持たせるためにフランス人が好きなメレンゲを合わせたのでしょう。

ところで、皆さんは日本独自のモンブランというのをご存じですか?マロンクリームの部分が茶色ではなくて、黄色いものです。東京だとコージーコーナーなどで見ることができますね。実はあのモンブランはパリのものをマネして作ったものではなくて、ある日本人のパティシエが考えたものなんですね。
現在も自由が丘にお店を構える「モンブラン」という洋菓子店の初代店主が1933年にシャモニー(モンブランのふもとの町)を訪れたときに、上でお話しをした郷土菓子に出会って、いたく感激されました。しかし皿盛りのデザートではお持ち帰りが出来ない。そこで色々と工夫をされて日本独自のモンブランを考案されたわけです。こちらは、柔らかい生地を好む日本人向けに土台をカステラにしてそこにカスタードクリーム、生クリームを絞り、さらにその上に甘露煮にした栗を使ったクリームを絞って、一番上にメレンゲをのせるというもの。これが原型となって日本版モンブランとして全国に広がっていきました。同じようにパティシエが工夫をしても、土台がカリカリのメレンゲになったり、柔らかいカステラになったりするのは、それぞれの国の食文化というか国民の嗜好の違いが反映されて、面白いですね。

フランスのモンブランにも、日本のモンブランにもそれぞれの魅力がありますが、もし両方の魅力を兼ね備えた、そんなモンブランがあったら・・・。
実はあるんです!次にご紹介するモンブランがそれ!

外見は、茶色でフランスのモンブランと変わりはありません。でも真ん中をスパッと切って観察してみると色々な工夫がなされていることがわかります。まず、土台のメレンゲにはヘーゼルナッツパウダーが混ぜ込まれており、マロンクリームの濃厚な味わいにマッチするようにされています。その上には和栗が丸々1個のせられ、生クリームでおおわれていますが、よく見ると栗の上にはスポンジがのせられています。その上には焼き栗のマロンクリームがたっぷりとかけられています。焼き栗のクリームは通常のマロンクリームに比べて香ばしく濃厚な味わいが楽しめます。フランスのモンブランは上で述べたように、メレンゲ+生クリーム+マロンクリームという構造ですが、このモンブランは、これに和栗を入れ、さらにスポンジも入れてと、日本のモンブランの美味しいところも取り入れたまさに、「日仏融合のモンブラン」です。

一方で、最近ではいわゆる「フレッシュ系モンブラン」とも言うべきモンブランが出現しています。通常、モンブランのマロンクリームは缶詰のマロンペーストを使って作ることが多いのですが、これらのモンブランは、その年の旬を迎えた和栗で作ったマロンクリームを使用しています。メレンゲが湿気ないようにお客様の注文を受けてからケーキを組み立てるお店もあります。

以上、お話ししたように一口にモンブランと言っても種類はさまざま。この秋は是非いろんなモンブランを食べ比べてください!!


今回ご紹介したモンブランのお店はこちら

以下「OO型」というのは、筆者独自の分類で商品名ではありませんのでご注意ください!

★モンテ・ビアンコ
ソル・レヴァンテ
東京都港区北青山3-10-14/TEL:03-5464-1155
http://sollevante.jp/

★フランス型のモンブラン
アンジェリーナ
東京都中央区銀座3-2-1プランタン銀座内/TEL:03-3564-4004
http://www.printemps-ginza.co.jp/restaurant/angelina/

★日本型のモンブラン
モンブラン
東京都目黒区自由が丘1丁目29−3/TEL:0120-63-1181
http://www.mont-blanc.jp/

★日仏融合型のモンブラン
ロワゾー・ド・リヨン
東京都文京区湯島3-42-12/TEL:03-3831-9901
http://www.lo-lyon.com/

★フレッシュ型のモンブラン
ラ・プレシューズ
東京都港区南麻布5-2-37/ TEL:03-5798-4845
http://www.la-precieuse.com/


バックナンバー
第3回「モンブラン」
第2回「ドゥー パティスリーカフェ」
第1回「ロワゾー・ド・リヨン」

プロフィール

猫井 登 (ねこい のぼる)

1960年、京都生まれ。
早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。 退職後、服部栄養専門学校調理科で学び、調理免許取得。
ル・コルドン・ブルー代官山校にて、菓子ディプロム取得。フランスエコール・リッツ・エスコフィエ等で製菓を学ぶ。著書に「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス刊)がある。
お菓子の由来物語
お菓子に秘められた物語を明らかにした"由来事典"。
「ショートケーキ」や「チーズケーキ」などの定番商品から、「パリブレスト」「ババ」などの変り種まで、約140種を掲載。